相続税コラム

相続税の税務調査では何を調べられる?

相続税の申告を終えた方の中には、「税務調査が入ることはあるのだろうか」「税務署はどこまで調べるのだろうか」と不安に感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

相続税の税務調査では、申告書に記載された財産だけでなく、亡くなった方の生前のお金の動きや、ご家族名義の預金なども確認されることがあります。

今回は、相続税の税務調査で特に確認されやすい5つのポイントについて解説します。

1.亡くなった方の預貯金

相続税の税務調査で重要な確認項目の一つが、亡くなった方(被相続人)の預貯金です。

税務署は、亡くなった日時点の預金残高だけでなく、過去の入出金の履歴にも注目します。

例えば、次のような取引です。

  • 亡くなる数年前から多額の現金が引き出されている
  • 特定の家族に繰り返し送金されている
  • 不動産を売却した代金の使い道が不明である
  • 生前の収入に比べて、申告された預貯金が著しく少ない

このような場合、引き出されたお金がどのように使われたのかを確認されることがあります。

特に注意したいのが、亡くなる直前に引き出された現金です。

例えば、亡くなる1か月前に銀行口座から300万円を引き出し、そのうち200万円が使われずに自宅で保管されていた場合、その200万円も原則として相続財産に含まれます。

銀行口座から引き出したからといって、相続税の対象から外れるわけではありません。

2.家族名義の預貯金(名義預金)

相相続税の税務調査では、亡くなった方だけでなく、配偶者や子ども、孫などの名義になっている預貯金についても確認されることがあります。

ここで問題となるのが「名義預金」です。

名義預金とは、口座の名義人と、実際にその預金を所有している人が異なる預金をいいます。

例えば、父親が子ども名義の口座を開設し、毎年100万円ずつ入金していたケースを考えてみましょう。

その口座について、

  • 子どもは口座の存在を知らなかった
  • 通帳や印鑑を父親が管理していた
  • 子どもが自由に預金を使える状態ではなかった

といった事情がある場合、実質的には父親の財産であると判断される可能性があります。

この場合、口座の名義が子どもであっても、父親の相続財産として申告する必要が生じます。

一方、親から子どもへの贈与が有効に成立し、その財産が実際に子どもに帰属している場合には、単に親が資金を出したという理由だけで名義預金になるわけではありません。

重要なのは口座の名義ではなく、実際に誰の財産なのかという点です。

3.生前贈与の状況

亡くなった方が生前に家族へ財産を贈与していた場合、その内容も税務調査で確認されることがあります。

例えば、次のような点です。

  • 贈与を受けた人が、その事実を認識していたか
  • 贈与された財産を誰が管理していたか
  • 贈与契約書などの資料が残っているか
  • 必要な贈与税の申告が行われていたか
  • 相続税の計算上、加算が必要な贈与財産が漏れていないか

注意したいのは、贈与税の申告をしていれば、必ず相続税の対象から外れるわけではないということです。

贈与の実態が認められなければ、亡くなった方の財産と判断される可能性があります。

また、有効な生前贈与であっても、相続開始前の一定期間内に行われた贈与については、相続税の課税価格に加算される場合があります。

令和5年度税制改正によって、暦年課税による生前贈与の加算対象期間は段階的に7年へ延長されます。

このため、生前贈与については、贈与した時期や金額、贈与を受けた人、贈与の成立状況などを整理しておくことが重要です。

4.現金や有価証券などの申告漏れ

税務調査では、預貯金以外の財産についても申告漏れがないか確認されます。

例えば、次のような財産です。

  • 自宅の金庫などに保管していた現金
  • 株式や投資信託などの有価証券
  • 家族や知人に貸していたお金
  • 同族会社に対する貸付金
  • 貴金属や骨董品などの財産
  • 海外に保有していた預金や不動産

特に、証券口座や金融機関の口座を複数保有していた場合、相続人がその存在を把握できず、申告から漏れてしまうことがあります。

また、亡くなった方が会社を経営していた場合には、会社に貸し付けていたお金や、保有していた非上場株式なども確認が必要です。

これらの財産は、相続人にとって把握しにくい場合もあるため、申告前に十分な調査を行うことが大切です。

5.申告した財産の評価額

相続税の税務調査では、財産の申告漏れだけでなく、申告した財産の評価額が適切かどうかも確認されます。

例えば、不動産については、

  • 土地の評価方法が適切か
  • 土地の利用状況が正しく反映されているか
  • 小規模宅地等の特例の適用要件を満たしているか

といった点が問題になることがあります。

また、非上場株式についても、会社の財務内容や株主の状況などに応じた適切な評価が行われているか確認される場合があります。

相続税の計算では、財産を漏れなく申告することに加え、それぞれの財産を正しく評価することも重要です。

税務調査はどのような流れで行われる?

相続税の実地調査は、通常、事前に税務署から連絡があり、日程を調整したうえで実施されます。ただし、一定の場合には事前通知が行われないこともあります。

調査では、相続人に対して、亡くなった方の生前の生活状況や財産の管理状況などについて質問が行われます。

例えば、次のような質問が考えられます。

  • 亡くなった方の預金通帳は誰が管理していましたか?
  • 生活費はどの口座から支払っていましたか?
  • 亡くなる前に多額の現金を引き出した理由は何ですか?
  • 生前、子どもや孫への贈与はありましたか?
  • 亡くなった方が保有していた財産について、ほかに心当たりはありませんか?

質問の内容は個々の事案によって異なります。

税務調査への対応では、事実関係を整理したうえで、わかる範囲で正確に回答することが重要です。

記憶が曖昧なことについては、無理にその場で回答せず、資料を確認してから説明することも考えられます。

税務調査で申告漏れが見つかったら?

税務調査の結果、相続財産の申告漏れなどが確認された場合には、修正申告や税務署による更正などによって、追加の相続税が発生することがあります。

また、状況に応じて、過少申告加算税や延滞税などが課される場合もあります。

さらに、財産を意図的に隠したり、事実を仮装したりしていた場合には、重加算税の対象となる可能性があります。

ただし、税務署から指摘を受けた事項が、必ずしもすべて正しいとは限りません。

財産の帰属や評価方法などについて見解が異なる場合には、客観的な資料に基づいて事実関係を確認し、適切に対応することが大切です。

まとめ|相続税の税務調査に備えて大切なこと

相続税の税務調査では、亡くなった方の財産だけでなく、生前のお金の動きや家族名義の財産など、幅広い事項が確認されることがあります。

特に注意したいのは、次の5つのポイントです。

  1. 亡くなった方の預貯金の入出金
  2. 家族名義の預貯金
  3. 生前贈与の状況
  4. 現金・有価証券などの申告漏れ
  5. 不動産などの財産評価

税務調査への備えとして最も重要なのは、相続税の申告段階で財産の内容や過去の取引を十分に確認し、正確な申告を行うことです。

特に、過去の預金移動や家族名義の財産については、時間が経過すると事実関係の確認が難しくなることがあります。

相続税の申告や税務調査への対応に不安がある場合には、相続税に詳しい税理士へ早めに相談することをおすすめします。

※本コラムは、掲載日時点の法令等に基づく一般的な解説であり、個別の事案について税務上の判断を示すものではありません。実際の取扱いは、具体的な事情や法令改正等により異なる場合がありますので、申告や手続きに当たっては、税理士等の専門家にご確認ください。

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